2006/07/21/012250
日本沈没(2006)
ローレライよりは観れた。
CG制作に使われているからなのか、やたら林檎マークばっかり出てくる点が非常に気になるけど。
特撮シーンは技術的には頑張っているほうなのではないかと思えたのだけど、特撮シーンの画面レイアウトやトーンに限ってはバランスの悪さがそれを台無しにしてしまっている。樋口真嗣監督の画作りというのはこの点で全て失敗しているような気がしてしまう。失敗は言いすぎかもしれないが、少なくとも個人的には好きになれない。静止画で見た時のパッと見の派手さばかりを優先しているように思える構成で、実写映像としてはリアリティに欠けるような印象。自身の監督作ではなくコンテやデザイン等で参加しているアニメーションやキャシャーンのバトルシーン、あるいは特技監督を担当した怪獣映画などで違和感がないのは、恐らくこの樋口監督がリアリティが求められる実写よりもファンタジーというか、どちらかと言えばある意味で現実感が必要の無い、派手なウソが必要とされ、現実とは異なる独特の世界観を前提にした映像と相性がいいということなのかもしれない。子供向けというわけではないのだが、キャシャーンの映像もある意味でアニメーション的、あるいはアニメーションそのものと言えること、怪獣映画の特撮シーンもそれに近い性格があることを考えると、この方はやはり特撮監督か、アニメーションやアニメーション的な映像の世界でこそ力を発揮するのだと思う。
脚本は酷い。物語の展開は置いておいて、台詞が説明的且つ芝居がかり過ぎていて、なんの重みも無い。ほとんどどの台詞もリアリティ云々以前に口語として話される言葉ではないのではないかと思うほど。あきれすぎて醒めてしまうので「寒さ」にゾッとすることさえできない。本の上でどうあれ、映像に役者の話す姿を収めている演出の責任もあるのだが、これもやはり前述したような監督の実写との相性問題だと思う。もしかするとこれが全てアニメーションで、声優の台詞なのだとしたら違和感が無いかもしれない。
どこにも感情移入する余地がないのは、視点が多すぎるからだけではないだろう。視点が多く、各登場人物に感情移入できなかったとしても演出さえ巧ければ語り部としての映像自体に入り込めるはず。恐らくテンポが悪すぎるのだろう。悪いというか無いのかもしれない。ローレライの時よりは改善していたが、列島がぶつ切りになる前に、映画がぶつ切りになってしまっている。編集というより総合的な演出の問題だろう。音楽の使い方から何から。ローレライより改善されていた点は、展開が速過ぎて何が起きているのかさえ全くわからないという状態までにはギリギリなっていないところ。これは恐らくローレライの反省点として監督自身が少しはコントロールできたか、周りが抑制させたのだと思う。勝手な憶測としては、監督補となっていたスタッフの方の尽力なのではないか。ただ、改善も微々たるもので、全体が把握できるところまで行っていない。繋ぎもおかしいが、まぁなんとか見れるというホントにギリギリのバランス。
ドラマ部分は言わずもがな。やはりこの監督さんに人間を演出させるのは厳しいようだ。しかし撮影は頑張っていると思う。光線の取り入れ方など、撮影監督の河津太郎さんはさすが。この方の撮る画はいつも光が柔らかく、透き通るような映像で、何よりいい意味でとてもわかり易い画。実は何度かお会いしたことがあるので多少贔屓目があるのかもしれないが、人柄も素晴らしい方なのである。
監督自身が軍事マニアということもあり、妙に詳しく自衛隊装備の解説が入ったりするところがあり苦笑。軍事関係の粗としては運用面でのリアリティ以外は無かったのではないかと思う。
お勧めはしないけど、観れないことはないと思う。かなり前に読んだ原作は集中して読めなかったのか、もしかしたら途中までしか読んでいないんじゃないかというような覚えがある程度だが、今回の映画、今の観客に合わせた解釈としての設定や方向性はそれほど悪くないと思う。映画としての完成度はどうあれ。オープニングやラストの持ってき方はハリウッド的しょうもなさがあってむしろ好き。1973年版もかなり前に観たため、大した印象が残っていないが、どっちが好きかと言われればやはり73年版。こっちはいい意味でチープ感のある特撮も楽しめるし。
ローレライに引き続き、また「沈む」ネタを扱って日本映画自体を沈没させる気かと思ったが、こんなに中途半端な印象を残すのであれば、むしろ盛大に沈没してもらったほうが良かった。このままだとまた実写映画を作ってしまう気がする。樋口真嗣監督には、次回は是非、アニメーションかアニメーション的な映画に挑戦してもらったほうが、業界にとっても観客にとっても、もしかしたら監督自身にとってもプラスになるのではないかと思う。